初夜で妻に「君を愛することはない」と言った私は、どうやら妻のことをめちゃくちゃ愛していたらしい


「それでだな、ワインに何か秘訣があるのかと思って……」
「それはない」
「え?」
「それは断じてない」
「そ、そうか」

 ワインを片手に持っていると、男味が増すとかそういうことはないのか……。

「分かった。ええとだな、うちの領内特有の話だからあくまでも参考に留めてほしいのだが」
「助かる」
「うちは皆呑気だから、思ったことをぽろぽろ口にしているようなんだ」
「思ったことを?」
「そうだ。例えば、ご飯を食べている時にふと、『今日も美しいな』と妻に向かってぽろりと呟く夫や、小麦の収穫をしている夫に『働く男って素敵……』と呟いている妻の例が散見される」
「なん、だと……!?」

 なんだその、生粋の人たらしな領地は!
 なんて危険な場所だ、ステファニーを連れて行くのは避けなければ。

「かくいう俺も、学園時代はよくミリ……ゲッホゲホ、女性に『ところ構わず口説かないで!』と恥ずかしがられてしまって、ようやくうちの領地が特異なことに気がついたんだ」
「それまで気がついていなかったのか」
「ああ。食事中に父が母を褒めるのも、ふとした時に母が私を褒めてくるのも、皆普通のことだと思っていた」

 生まれながらの人たらし、怖い。

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