初夜で妻に「君を愛することはない」と言った私は、どうやら妻のことをめちゃくちゃ愛していたらしい
(侯爵家の危機とは、きっと次期侯爵であるミッチーのストレスフルな精神状態のことに違いありませんわ)
となるとミッチーはやはり、わたくしの予想だにしない何かをしに街に繰り出したに違いありません。
きっとこの結婚休暇中の鬱憤を晴らすことのできる、女性を買う以外の、何かをしに……。
(そんな楽しいことを新妻のわたくしに内緒にするなんて……なんて酷い夫ですの……!)
こんな楽しいイベントを見過ごすわたくしではありません。
一人で楽しむなんて、絶対に許しませんわ!
わたくしは『しばらく部屋に篭るので絶対に部屋に入らないように』と侍女達に厳命し、むふふとほくそ笑みます。
わたくし実は、お忍びのプロなのです!
小さい頃から、ミッチーの跡をつけるべく、あの手この手で気配を消し、扮装し、潜入してきました。
あんな派手な侯爵家の馬車で出かけたミッチーの跡をつけることなんて、お手のものなのです。
(まずは髪と瞳の色ね)
わたくしの地毛は軽やかな金髪で、瞳の色も琥珀色なので、とても目立ちます。遠目から見たら黄色い旗印のようです。こんな目印はさっさと暗い色に変えてしまうに越したことはありません。
わたくしは手慣れた手つきで光魔法を操り、髪の色を焦げ茶色に、瞳の色を木苺色に変えてしまいます。
この国の貴族は皆セイントルキア学園で魔法の使い方を学ぶので、このぐらいはお茶の子さいさいです。