初夜で妻に「君を愛することはない」と言った私は、どうやら妻のことをめちゃくちゃ愛していたらしい


 顔を上げると、パチリと向かいの店の店内にいるミッチーと目線が合いました。


(えっ?)

 ミッチーはパチパチと目を瞬いて、こちらを見ています。
 わたくしはそっと、ボンネットで顔を隠すようにそれとなく逆方向を向き、紅茶を飲み切ると急いでその場を立ち去りました。

(だ、大丈夫ですわよね? 遠目ですし、顔もほとんどボンネットで隠れていましたし、髪の色も違いますし、相手はあのミッチーですし)

 以前この国の令嬢向けの雑誌のモデル一覧を見せて「ミッチーは誰が一番綺麗だと思いますの!?」と詰め寄ったところ、ミッチーは首をかしげてわたくしを見るばかりで、雑誌に載っているモデルの令嬢達に全く興味を示していませんでした。セイントルキア学園時代も、同じ学年の女性に関して「見分けがつかない」「髪の色が違うと分かりやすいんだが」「全員髪を色鉛筆のように色分けして染めてくれないだろうか」と最低なことを言いながら悩んでいたくらいです。髪の色を変えてボンネットを深く被ったわたくしと一瞬目が合ったくらいで、わたくしがステファニーだと気がついたりはしないでしょう。

 わたくしは慌ててパタパタと大通りを早足で歩きながら、人混みを縫うようにしてミッチーから距離を取ります。

 距離を取ります。

 距離を……。

(……!? 追いかけてきてる!?)

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