初夜で妻に「君を愛することはない」と言った私は、どうやら妻のことをめちゃくちゃ愛していたらしい
「おっと、お嬢ちゃん。どこに行くつもりなんだい?」
ぎょっとして振り向くと、そこには30代から40代くらいの見窄らしい格好をした男性が3人、いやらしい笑みを浮かべながら、わたくしを取り囲んでいました。
「大通りに戻りま……戻る、の。邪魔しないで」
わたくしは丁寧な言葉遣いを改めましたが、それを聞いて男達はニヤリと笑みを深めます。
「へえ、その言葉遣い。いいとこの嬢ちゃんだな」
「上物じゃないか。こんなところで一人でふらふらするなんて、不用心だよなぁ」
「いいとこの令嬢にありがちのお忍びってか? 冒険恋愛小説に憧れて、こういうことをするバカな娘は絶えないんだよなあ」
ゲラゲラと下卑た笑い声を上げる三人に、わたくしは背筋を伸ばしたまま向き合います。
「……いいから、この場ですぐにわたくしを解放しなさい。後悔しますわよ」
「おおっ、こりゃあ本格的にお嬢様だ!」
「威勢のいいこって、どこにその自信があるんだろうなあ」
「なんでも自分一人でできるっていう万能感、羨ましいねぇ。若い娘っていうのはこうでないと」
「……! 離しなさい!」
そうこうしているうちに、男達がわたくしの右手を掴んできます。
(全く、仕方ありませんわね)
わたくしは得意の闇魔法で、鞭を作って反撃に出ようとして――それができないことに、ようやく気がつきました。
「……!? ど、どうして」
「おっと、気が付いたか」
「魔法対策ぐらいしているに決まってるだろう?」
「お貴族様やいいとこのお家だと、魔法を習っていることが多いからな。下品な下町の人間だってそれくらい知ってるさ」
「魔法を使えると思って油断していたんだろう? 箱入り娘にありがちな世間の狭さだねぇ」