初夜で妻に「君を愛することはない」と言った私は、どうやら妻のことをめちゃくちゃ愛していたらしい


 わたくしの手の届かないところにいる男が、何やら大きめの光る懐中時計のようなものを持っています。
 チェーンにぶら下げられたそれが原因で魔法が使えないようです。おそらく、何かの魔道具なのでしょう。

(まずいですわ、こうなってしまうとわたくしはただの非力な一般人ですわ)

 諦めて大声を上げようとしたところで、当然ながら強い力で口を塞がれてしまいます。
 わたくしの口を塞いでいる男は、わたくしを舐め回すように見るとごくりと唾を飲み込みました。

「……本当にいい女だ。今日はいい日だな」
「ほら、行くぞ。これ以上騒がれると面倒だ」
「分かってるよ。こっちに来い!」
「むぐ……ッ!」

 わたくしは口を塞がれたまま抵抗しますが、男の腕力に敵う訳がありません。

(どうしよう、どうしましょう)

 供を一人も連れずに街に出て路地裏に入るなんて、不用心もいいところでした。男達の言うとおり、わたくしは魔法が使えるからと調子に乗っていたのです。こんなことになるなんて、思いもよらなくて。

(ミ、ミッチーが気がついてくれたら)

 わたくしは、さっき自分で撒いてきたはずの夫を思い浮かべます。

 彼は見ず知らずの好みの女を追いかけていただけです。沢山の街娘達に紛れて見失った少し気になっただけの女を、こんなところまで追いかけてきてくれるでしょうか。
 追いかけてきてくれたらくれたで色々と別の問題が発生しますが、わたくしを助けてくれるとしたらもう彼しか――。

(…………)

 いや無理ですわ。
 いくらミッチーでも、この状況で駆けつけるなんて素敵ヒーローすぎますわ。
 わたくしはわたくしの力で、この状況から脱出するより他はないのです。

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