夜空に咲く恋

プロローグ 七歳の約束

ヒューッ!
ドーン! パラパラパラッ!

「すごーいっ! 大きな花火! 颯太くん、綺麗だねー!」
「うん! 綺麗だね! 朱美ちゃん! 花火って沢山の色があるよね。朱美ちゃんは何色が好き?」

「私は赤! 朱美の名前と同じ赤色が好き!」
「朱美ちゃんの名前って赤い色の事だよね。花火と一緒だ」

 愛知県岡崎市に住む村上むらかみ朱美あけみ (七歳)と坂本さかもと颯太そうた (七歳)は向かいの家に住む幼馴染みだ。毎年八月に開催される岡崎市花火大会を互いの家族と一緒に観る事が恒例行事となっている。地元の人だけが知る絶好の花火鑑賞スポットに広げられたシートの上で、朱美と颯太は肩を並べて座り食い入る様に夜空を見上げている。

「あっ、そうだ! 良い事思いついた!」
「なーに? 朱美ちゃん」

「ねぇ、颯太くん? 大きくなったら私の為に大っきな花火を打ち上げてよ!」
「ええっ、無理だよ。花火なんてどうやって打ち上げるのか分からないし」

「良いじゃん、大人になってからで良いから! ねっ? 赤い大きな花火! 私の為にドーン! って打ち上げてよ!」
「じゃあ大人になってからね。うん、良いよー! 約束!」

「やったー! ありがとう、颯太君! 約束ねっ!」

 喜びのあまり、朱美にとびきりの笑顔が咲く。朱美はそのまま颯太の後ろから飛びつき、颯太の手を取り指切りした。朱美と颯太、七歳の夏。朱美のとびきりの笑顔と共に交わされたこの約束は、二人にとって忘れられないものとなった。
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