夜空に咲く恋
第二十七話 ハラスメント
玲奈は不安になる蒼を救うべく、ある事を思いついた。
「ところで蒼? 私も話をしながら思いついた事があるから、ちょっと協力してもらえる?」
「え? 協力? 何を?」
「村上さんが坂本君をどう思っているのか? 試しに想像して考えてみるの」
「ええっ? そんな事できるの!? どうやって!?」
「じゃ、始めるわよ蒼。準備はいい?」
「う、うん……」
(玲奈……何をするんだろう?)
蒼は不安と好奇心でドキドキしながら玲奈が始めようとする事を待つが、この後、衝撃の発言が玲奈の口から飛び出す。
「蒼、坂本君とキスするところを想像してみて」
(えっ!? ええええっっ!!? 颯太君とキスっ!?)
あまりに予想外の展開に、蒼はあたふたと取り乱す。
「ちょちょちょっ! 玲奈!?」
取り乱す蒼の事は気にせず、玲奈は蒼に具体的な想像を強制させる。
「ほら蒼、私の言う通りに想像して。今、蒼と坂本君はすぐ近くの距離で見つめ合っているの。坂本君の顔があなたの目の前にあるわ」
(あわわわわっ!! 玲奈!? 突然何を言い出すの!?)
蒼の全身が一気に熱くなってゆく……が、そんな事は一向に構わず玲奈は続ける。
「坂本君は左手をあなたの腰に手を回しているわ。右手はあなたの頬に添えている。二人はちょっと照れながら見つめ合ってる」
(ええっ、そんなっ! 私と坂本君がっ!? ああっ!)
「はぁっ……はぁっ……」
蒼の息が荒くなる。玲奈は更に想像の強制を続ける。
「坂本君の顔がどんどん近づいてくる。あなたは最初は少し拒んだけど……覚悟を決めて自分の両手をゆっくりと坂本君の腰に回すの……そして、そっと目を閉じたわ」
(あわわわっ!! ダメっ! こんなのダメっーーー!!)
「ちょちょちょっと! 玲奈!! ストップ!! もう無理―っ!!」
……ボンッ!!
蒼の頭頂部から蒸気が噴き出す音がした。玲奈が作り出した桃源郷の中に放り込まれた想像の蒼は……帰らぬ人となった様だ。しかし、現実の蒼は苦しみながらも辛うじて息をしている。
……ハアッ、ハアッ、ハアッ。
蒼の呼吸が乱れる。その様子を見て満足そうに玲奈が尋ねる。
「蒼、どうかしら?」
「どうかしら? ……じゃないわよ!? 玲奈! これは一体何なの!? 何かの罰ゲーム!? 新種のハラスメントっ!?」
「ふふっ。新種のハラスメント……は面白いわね」
「って、玲奈! 笑ってる場合じゃない! こんなになるまで私の身体をもてあそんでっ! 一体何がしたいのっ!?」
「ふふっ、ごめんなさいね。でも、蒼? ……どうだった?」
「どうもこうもないでしょ! 恥ずかしくて、ドキドキして、身体中が熱くなって! もう、訳分からないっ!」
「……でしょ?」
(……えっ?)
少しふざけた表情から真顔に戻った玲奈を見て、蒼は自分が受けたハラスメントの意味を考え始める。
「でしょ……って? どういう事?」
「今、蒼が体験した通りよ。好きな人とキスする所なんて想像したら、誰だって多かれ少なかれそうなるでしょ? 流石に頭から蒸気が噴き出したのは驚いたけど。ふふっ」
「もう! 玲奈の意地悪! でも……今の意地悪が朱美ちゃんと何か関係あるの?」
「蒼? もし今みたいに村上さんに『坂本君とキスする所を想像してみて』って言ったら彼女はどうなると思う?」
「それは……」
玲奈の言う通り、蒼は朱美のリアクションを想像してみる。
「朱美ちゃんならきっと……『ないない! 颯太とそんな事、考えられないよー!』ってすぐに否定しちゃうと思う」
「ええ、きっとそうよね。私も同感よ」
「えっ? ……つまり、どういう事?」
「私の意見はこうよ。蒼は坂本君とのキスなんて想像しただけで壊れちゃう。でも、村上さんにはそんな想定は全く無い。想像しろと言われても想像すらできない事だと思うの」
玲奈が繰り広げた想像の舞台に結末が見え始め、蒼の顔は少し明るくなる。
「そっか……つまり、朱美ちゃんにとって坂本君は恋愛対象にはなってない……って事になるよね」
「ええ、そういう結論よ。それは実際に本人もそう言っている訳だし、今、私達が試しに想像してみてもそういう結論になったわね」
最終的な結論を聞き、蒼はいつもの笑顔を取り戻した。
「そっか、そうだよね……やっぱり私、考え過ぎちゃってたのかな」
「ええ、そういう事にしておきましょ」
「やっぱり玲奈は頼りになるよ! 玲奈、ありがとーっ!!」
蒼は大きな体でしっかりと玲奈にしがみつく。
「どういたしまして……でも、蒼? こんなにしがみつくのはちょっと大げさじゃない?」
「ううん、そんな事はないよ? 玲奈……ちゃん? ふふふっ」
「えっ?」
蒼は玲奈にしがみついたまま不敵な笑みを浮かべ、大きな声を上げる。
「いくら何でも、さっきの坂本君との恥ずかしい想像は酷―いっ! お仕置き!!」
「えっ、あっ! ちょっと蒼!?」
蒼は玲奈を腕に捕えたまま、全身をくすぐり始めた。
「あははっ、ちょっと、ダメ! 蒼! くすぐったーい!」
「まだまだー! お仕置きはこんなのじゃ足りないからねっ!」
「い、嫌―っ!! やめてーーっ!!」
蒼は玲奈が作り出した想像の中で苦しめられたのだが、今後は逆に、蒼が作り出したくすぐり地獄の中で玲奈が暫くの間悶え苦む事になった。
「ところで蒼? 私も話をしながら思いついた事があるから、ちょっと協力してもらえる?」
「え? 協力? 何を?」
「村上さんが坂本君をどう思っているのか? 試しに想像して考えてみるの」
「ええっ? そんな事できるの!? どうやって!?」
「じゃ、始めるわよ蒼。準備はいい?」
「う、うん……」
(玲奈……何をするんだろう?)
蒼は不安と好奇心でドキドキしながら玲奈が始めようとする事を待つが、この後、衝撃の発言が玲奈の口から飛び出す。
「蒼、坂本君とキスするところを想像してみて」
(えっ!? ええええっっ!!? 颯太君とキスっ!?)
あまりに予想外の展開に、蒼はあたふたと取り乱す。
「ちょちょちょっ! 玲奈!?」
取り乱す蒼の事は気にせず、玲奈は蒼に具体的な想像を強制させる。
「ほら蒼、私の言う通りに想像して。今、蒼と坂本君はすぐ近くの距離で見つめ合っているの。坂本君の顔があなたの目の前にあるわ」
(あわわわわっ!! 玲奈!? 突然何を言い出すの!?)
蒼の全身が一気に熱くなってゆく……が、そんな事は一向に構わず玲奈は続ける。
「坂本君は左手をあなたの腰に手を回しているわ。右手はあなたの頬に添えている。二人はちょっと照れながら見つめ合ってる」
(ええっ、そんなっ! 私と坂本君がっ!? ああっ!)
「はぁっ……はぁっ……」
蒼の息が荒くなる。玲奈は更に想像の強制を続ける。
「坂本君の顔がどんどん近づいてくる。あなたは最初は少し拒んだけど……覚悟を決めて自分の両手をゆっくりと坂本君の腰に回すの……そして、そっと目を閉じたわ」
(あわわわっ!! ダメっ! こんなのダメっーーー!!)
「ちょちょちょっと! 玲奈!! ストップ!! もう無理―っ!!」
……ボンッ!!
蒼の頭頂部から蒸気が噴き出す音がした。玲奈が作り出した桃源郷の中に放り込まれた想像の蒼は……帰らぬ人となった様だ。しかし、現実の蒼は苦しみながらも辛うじて息をしている。
……ハアッ、ハアッ、ハアッ。
蒼の呼吸が乱れる。その様子を見て満足そうに玲奈が尋ねる。
「蒼、どうかしら?」
「どうかしら? ……じゃないわよ!? 玲奈! これは一体何なの!? 何かの罰ゲーム!? 新種のハラスメントっ!?」
「ふふっ。新種のハラスメント……は面白いわね」
「って、玲奈! 笑ってる場合じゃない! こんなになるまで私の身体をもてあそんでっ! 一体何がしたいのっ!?」
「ふふっ、ごめんなさいね。でも、蒼? ……どうだった?」
「どうもこうもないでしょ! 恥ずかしくて、ドキドキして、身体中が熱くなって! もう、訳分からないっ!」
「……でしょ?」
(……えっ?)
少しふざけた表情から真顔に戻った玲奈を見て、蒼は自分が受けたハラスメントの意味を考え始める。
「でしょ……って? どういう事?」
「今、蒼が体験した通りよ。好きな人とキスする所なんて想像したら、誰だって多かれ少なかれそうなるでしょ? 流石に頭から蒸気が噴き出したのは驚いたけど。ふふっ」
「もう! 玲奈の意地悪! でも……今の意地悪が朱美ちゃんと何か関係あるの?」
「蒼? もし今みたいに村上さんに『坂本君とキスする所を想像してみて』って言ったら彼女はどうなると思う?」
「それは……」
玲奈の言う通り、蒼は朱美のリアクションを想像してみる。
「朱美ちゃんならきっと……『ないない! 颯太とそんな事、考えられないよー!』ってすぐに否定しちゃうと思う」
「ええ、きっとそうよね。私も同感よ」
「えっ? ……つまり、どういう事?」
「私の意見はこうよ。蒼は坂本君とのキスなんて想像しただけで壊れちゃう。でも、村上さんにはそんな想定は全く無い。想像しろと言われても想像すらできない事だと思うの」
玲奈が繰り広げた想像の舞台に結末が見え始め、蒼の顔は少し明るくなる。
「そっか……つまり、朱美ちゃんにとって坂本君は恋愛対象にはなってない……って事になるよね」
「ええ、そういう結論よ。それは実際に本人もそう言っている訳だし、今、私達が試しに想像してみてもそういう結論になったわね」
最終的な結論を聞き、蒼はいつもの笑顔を取り戻した。
「そっか、そうだよね……やっぱり私、考え過ぎちゃってたのかな」
「ええ、そういう事にしておきましょ」
「やっぱり玲奈は頼りになるよ! 玲奈、ありがとーっ!!」
蒼は大きな体でしっかりと玲奈にしがみつく。
「どういたしまして……でも、蒼? こんなにしがみつくのはちょっと大げさじゃない?」
「ううん、そんな事はないよ? 玲奈……ちゃん? ふふふっ」
「えっ?」
蒼は玲奈にしがみついたまま不敵な笑みを浮かべ、大きな声を上げる。
「いくら何でも、さっきの坂本君との恥ずかしい想像は酷―いっ! お仕置き!!」
「えっ、あっ! ちょっと蒼!?」
蒼は玲奈を腕に捕えたまま、全身をくすぐり始めた。
「あははっ、ちょっと、ダメ! 蒼! くすぐったーい!」
「まだまだー! お仕置きはこんなのじゃ足りないからねっ!」
「い、嫌―っ!! やめてーーっ!!」
蒼は玲奈が作り出した想像の中で苦しめられたのだが、今後は逆に、蒼が作り出したくすぐり地獄の中で玲奈が暫くの間悶え苦む事になった。