夜空に咲く恋
第四十話 比較
勉強会の当日を迎えた。颯太の部屋に朱美、蒼が集まり、三人で朱美が苦手な英語と数学の試験対策をする。
集合時間の少し前から颯太と朱美は玄関先で、自宅から自転車でやってくる蒼の到着を待つ。颯太と朱美の友達が来る……と言う事で興味を示した颯太の妹、莉子も一緒だ。蒼の到着を待ちながら、莉子は普段着姿の朱美を見て残念そうに雑談をする。
「朱美ちゃん、無地のTシャツに中学のハーフパンツジャージって……ちょっと普段着過ぎない? テスト対策の勉強会だから気楽な服装の方が良いのは分かるけど……」
「えーっ? だって、颯太の部屋で過ごすなら普段着で構わないし、勉強に集中しやすい服装って言ったらジャージでしょ? それに中学卒業したからと言ってまだ着られるジャージを捨てちゃうのは勿体ないし」
「それは分かるけど……はぁー」
(朱美ちゃん、お兄ちゃんの前でもうちょっと可愛い服装をすればいいのに……)
お洒落とは全く無縁な朱美の服装を見て莉子は軽いため息をつく。そうしていると、自転車に乗って近づいてくる長身の美少女が三人の視界の中に現れた。蒼である。蒼は三人の目の前に到着して自転車を止め、アイドルさながらの爽やかで可愛らしい笑顔を見せ、手土産を差し出しながら挨拶をする。
「颯太君、朱美ちゃん、おはよっ。はいこれ、カヌレ。勉強に疲れたら休憩して皆で食べよ」
(……蒼ちゃんっ! 今日も可愛い! それにお土産もお洒落だしっ!?)
(蒼さん、やっぱり凄いな! 可愛さが他の同級生と全然違う!? しかもお土産がカヌレ!?)
(えっ!? 何なにっ!? こんなに美人で綺麗な人がお兄ちゃんの知り合いなのっ!?)
「……」
「……」
「……」
朱美、颯太、莉子は爽やかで可愛らしい蒼の容姿と雰囲気に口をあんぐりと開けて言葉を失う。今日、蒼が着ている服装は次の通りだ。
トップスは首元が広めに空いたVネックの白いシャツ、その上に少し透ける薄手の生地で淡い青色チェック柄のカーディガンを羽織っている。その丈は長めで腰元まであり、コートを着ているかの様なフォルムだ。下はデニムのショートパンツで蒼の長身と長い脚、スタイルの良さが活かされている。まるで初夏のファッション雑誌からモデルがそのまま飛び出してきたかの様な、洗練さと可愛らしさを併せ持つ見事なコーデである。
あまりに可愛らしくセンスの高い蒼のコーデに朱美、颯太、莉子は言葉を失い暫く見とれてしまう。
「……」
「……」
「……」
「えっと、皆? どうかした? あっ……あなたは颯太君の妹さんで莉子ちゃんかな? 初めまして。三浦蒼です。よろしくね」
「えっ? あっ、は、はいっ! 初めまして! お兄ちゃんがいつもお世話になってます! 坂本莉子です!」
莉子は蒼の信じられない程に可愛いらしくセンスの高い外観と爽やかな笑顔に驚き、思わず颯太に小声で耳打ちをする。
「ちょっとお兄ちゃん! この三浦さんって一体何者!? モデルさんの仕事やってたりするの!?」
「びっくりするだろ? 俺も最初はそう思ったよ。でも蒼さんは普通の女子高生。芸能関係の仕事はしてないよ」
「でも本当にびっくり! 朱美ちゃんとお兄ちゃんがこんなに可愛くて綺麗な人と知り合いだったなんて!!」
小声で話す兄妹の隣で、我に返った朱美は蒼に挨拶を返す。
「蒼ちゃん、おはよ。今日も凄く可愛いねー。本当に蒼ちゃんの可愛さと服のセンスにはびっくりだよ。勉強も教えてもらいたいけど、ファッションの事も蒼ちゃんから色々教えてもらわないとっ」
「あはは。ありがと、朱美ちゃん」
褒められた蒼は両手を広げてクルっと回転してみたり、モデルさながらのポーズをとってみたりする。その美しさと可愛さに、再び三人は心を撃ち抜かれる。
(ああっもう! 蒼ちゃん、可愛い過ぎ!)
(蒼さん……本当にモデルみたいだな)
(凄い……この人、可愛さが半端ない……)
「あっ、そう言えばまだ颯太君に感想もらってないよね? 今日の私どうかな? 颯太君?」
少し身を屈めて下の角度から上目遣いで訊ねてくる蒼の可愛い仕草に、颯太は思わず顔を赤くする。
「う、うん……蒼さん、今日も凄く可愛いよ。本当にお洒落な服を沢山持ってるんだね。でも、そのお洒落な服に着られてるんじゃなくて、ちゃんと着こなせている所が凄いと思う」
「あははっ。ありがと、颯太君!」
颯太の誉め言葉で蒼の笑顔が花開く。そしていつもの癖でバシバシと颯太の肩を叩き始める。
「痛っ。あはは。その癖が無ければ蒼さんも上品なおしとやかさんなんだけどねっ。まあでも、そこが元気な感じで蒼さんっぽいかな」
「うんうん、颯太君も私の事、だんだん分かってきてくれたねーっ」
蒼は喜びながら再び颯太の肩をバシバシと叩く。一方その隣では莉子が、お洒落に服を着こなす蒼と普段着の最高峰で身を固めた朱美を見比べる。そして朱美の肩に手を乗せて物憂げに小さなため息をついた。
「はぁーっ」
「うん? 莉子ちゃん? どうかした?」
「ううん。何でもないよ」
(朱美ちゃん、前に『恋のキューピット役をしてる』って言ってたけど……まさかこの人とお兄ちゃん? いや、流石にこんなに綺麗な人がお兄ちゃんの事を……なんてある訳ないよね!? うん、ないない、きっと私の考え過ぎだ……)
莉子の勘は鋭い。しかし、颯太と朱美が結ばれる事を望んでいる莉子は鋭く働いてしまう勘を否定し、その不安を打ち消す様に声を出して皆を家へ迎え入れる。
「お兄ちゃん! 今日はテスト勉強するんでしょ? そろそろ家に入ってもらったら?」
「ああ、そうだな。朱美、蒼さん、中へどうぞ」
颯太の案内で朱美と蒼が颯太の部屋へ向かう。莉子は茶の用意をするため、三人と別れて台所へ向かう。その別れ際、莉子はジャージ姿の朱美と、可愛らしい服を見事に着こなす蒼の後ろ姿を見比べて……今度は大きなため息をついた。
集合時間の少し前から颯太と朱美は玄関先で、自宅から自転車でやってくる蒼の到着を待つ。颯太と朱美の友達が来る……と言う事で興味を示した颯太の妹、莉子も一緒だ。蒼の到着を待ちながら、莉子は普段着姿の朱美を見て残念そうに雑談をする。
「朱美ちゃん、無地のTシャツに中学のハーフパンツジャージって……ちょっと普段着過ぎない? テスト対策の勉強会だから気楽な服装の方が良いのは分かるけど……」
「えーっ? だって、颯太の部屋で過ごすなら普段着で構わないし、勉強に集中しやすい服装って言ったらジャージでしょ? それに中学卒業したからと言ってまだ着られるジャージを捨てちゃうのは勿体ないし」
「それは分かるけど……はぁー」
(朱美ちゃん、お兄ちゃんの前でもうちょっと可愛い服装をすればいいのに……)
お洒落とは全く無縁な朱美の服装を見て莉子は軽いため息をつく。そうしていると、自転車に乗って近づいてくる長身の美少女が三人の視界の中に現れた。蒼である。蒼は三人の目の前に到着して自転車を止め、アイドルさながらの爽やかで可愛らしい笑顔を見せ、手土産を差し出しながら挨拶をする。
「颯太君、朱美ちゃん、おはよっ。はいこれ、カヌレ。勉強に疲れたら休憩して皆で食べよ」
(……蒼ちゃんっ! 今日も可愛い! それにお土産もお洒落だしっ!?)
(蒼さん、やっぱり凄いな! 可愛さが他の同級生と全然違う!? しかもお土産がカヌレ!?)
(えっ!? 何なにっ!? こんなに美人で綺麗な人がお兄ちゃんの知り合いなのっ!?)
「……」
「……」
「……」
朱美、颯太、莉子は爽やかで可愛らしい蒼の容姿と雰囲気に口をあんぐりと開けて言葉を失う。今日、蒼が着ている服装は次の通りだ。
トップスは首元が広めに空いたVネックの白いシャツ、その上に少し透ける薄手の生地で淡い青色チェック柄のカーディガンを羽織っている。その丈は長めで腰元まであり、コートを着ているかの様なフォルムだ。下はデニムのショートパンツで蒼の長身と長い脚、スタイルの良さが活かされている。まるで初夏のファッション雑誌からモデルがそのまま飛び出してきたかの様な、洗練さと可愛らしさを併せ持つ見事なコーデである。
あまりに可愛らしくセンスの高い蒼のコーデに朱美、颯太、莉子は言葉を失い暫く見とれてしまう。
「……」
「……」
「……」
「えっと、皆? どうかした? あっ……あなたは颯太君の妹さんで莉子ちゃんかな? 初めまして。三浦蒼です。よろしくね」
「えっ? あっ、は、はいっ! 初めまして! お兄ちゃんがいつもお世話になってます! 坂本莉子です!」
莉子は蒼の信じられない程に可愛いらしくセンスの高い外観と爽やかな笑顔に驚き、思わず颯太に小声で耳打ちをする。
「ちょっとお兄ちゃん! この三浦さんって一体何者!? モデルさんの仕事やってたりするの!?」
「びっくりするだろ? 俺も最初はそう思ったよ。でも蒼さんは普通の女子高生。芸能関係の仕事はしてないよ」
「でも本当にびっくり! 朱美ちゃんとお兄ちゃんがこんなに可愛くて綺麗な人と知り合いだったなんて!!」
小声で話す兄妹の隣で、我に返った朱美は蒼に挨拶を返す。
「蒼ちゃん、おはよ。今日も凄く可愛いねー。本当に蒼ちゃんの可愛さと服のセンスにはびっくりだよ。勉強も教えてもらいたいけど、ファッションの事も蒼ちゃんから色々教えてもらわないとっ」
「あはは。ありがと、朱美ちゃん」
褒められた蒼は両手を広げてクルっと回転してみたり、モデルさながらのポーズをとってみたりする。その美しさと可愛さに、再び三人は心を撃ち抜かれる。
(ああっもう! 蒼ちゃん、可愛い過ぎ!)
(蒼さん……本当にモデルみたいだな)
(凄い……この人、可愛さが半端ない……)
「あっ、そう言えばまだ颯太君に感想もらってないよね? 今日の私どうかな? 颯太君?」
少し身を屈めて下の角度から上目遣いで訊ねてくる蒼の可愛い仕草に、颯太は思わず顔を赤くする。
「う、うん……蒼さん、今日も凄く可愛いよ。本当にお洒落な服を沢山持ってるんだね。でも、そのお洒落な服に着られてるんじゃなくて、ちゃんと着こなせている所が凄いと思う」
「あははっ。ありがと、颯太君!」
颯太の誉め言葉で蒼の笑顔が花開く。そしていつもの癖でバシバシと颯太の肩を叩き始める。
「痛っ。あはは。その癖が無ければ蒼さんも上品なおしとやかさんなんだけどねっ。まあでも、そこが元気な感じで蒼さんっぽいかな」
「うんうん、颯太君も私の事、だんだん分かってきてくれたねーっ」
蒼は喜びながら再び颯太の肩をバシバシと叩く。一方その隣では莉子が、お洒落に服を着こなす蒼と普段着の最高峰で身を固めた朱美を見比べる。そして朱美の肩に手を乗せて物憂げに小さなため息をついた。
「はぁーっ」
「うん? 莉子ちゃん? どうかした?」
「ううん。何でもないよ」
(朱美ちゃん、前に『恋のキューピット役をしてる』って言ってたけど……まさかこの人とお兄ちゃん? いや、流石にこんなに綺麗な人がお兄ちゃんの事を……なんてある訳ないよね!? うん、ないない、きっと私の考え過ぎだ……)
莉子の勘は鋭い。しかし、颯太と朱美が結ばれる事を望んでいる莉子は鋭く働いてしまう勘を否定し、その不安を打ち消す様に声を出して皆を家へ迎え入れる。
「お兄ちゃん! 今日はテスト勉強するんでしょ? そろそろ家に入ってもらったら?」
「ああ、そうだな。朱美、蒼さん、中へどうぞ」
颯太の案内で朱美と蒼が颯太の部屋へ向かう。莉子は茶の用意をするため、三人と別れて台所へ向かう。その別れ際、莉子はジャージ姿の朱美と、可愛らしい服を見事に着こなす蒼の後ろ姿を見比べて……今度は大きなため息をついた。