忘却の天使は溺愛に囚われて
「送っていく」
「そんな、申し訳ないので大丈夫です!」
「この辺りをひとりで歩くなんて危ないだろ」
「あっ……」
そうだ、ここは無法地帯。
昨日のように悪い人たちがたくさんいると思うとゾッとした。
「二度とお前を危険な目に遭わせたりしない。絶対に守るから安心しろ」
頭をぽんぽんされ、ドキッとしてしまう。
朔夜さんにそんな風に言われて、胸が高鳴らない方がおかしい。
先程のかわいい姿とは違い、今度はかっこよすぎて恐怖心なんてものは一瞬で飛び去ってしまった。
まだ会って一日しか経っていないけれど、すでに朔夜さんの虜になりそう。
「わっ、今日はバイクなんですね」
「普段はバイクが多いな。昨日がたまたま車だっただけで」
「そういえば車も運転手さんもいなくなってますね。どこに行ったんですか?」
「まあ……色々」
言葉を濁され、あまり聞いてはいけないのかと思い、大人しく朔夜さんの後ろに乗らせてもらう。
バイクに乗るのは初めてで、朔夜さんと密着状態なのもあり、なんだかドキドキした。