忘却の天使は溺愛に囚われて


 けれど、今の幸せがそう長く続かないことはわかりきっている。
 今ならまだ引き返せるはずだ。

 そのためにも私がやるべきことは二つ。
 一つ目は昨日決めた通り、私らしく朔夜さんに接すること。
 それから二つ目は……“カンナ”の正体を辿ること。

 朔夜さんの探している“カンナ”は本当に実在するのか。
 私に似た別人であるとするなら、一刻も早く見つけてあげないと。朔夜さんはきっと今も“カンナ”を探し求めている。

 だからこそ私は──

「高校一年の時の乙葉の様子?」
「そんなこと聞いてどうしたの急に」

 今日は高校一年の友人ふたりと会っていた。
 カフェで話している時に、私は思い切ってふたりに聞いてみた。

 昨日までに会ったユキとミカは、私の知らない私について知っていることがあり、このふたりも知っているのではと思ったのだ。

「深く考えなくて大丈夫だから! 様子がおかしかったこととかなかった?」

「うーん……あ、そういえば。乙葉、高一の時にいい感じだった人のこと覚えてる?」
「いい感じの……?」

 そんな人いたっけ? と首を傾げる。

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