ヒートフルーツ【特別編集版第2部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
真実、その深い沼/その3
アキラ



「香月さん、はじめに言っておきます。オレは、いや…、うちの社はもう、この”関連”から手を引いています。今手元にある記事が表に出たからって、事実認識のコメントや情報を尋ねるつもりはないので。安心してください」

「そうですか…」

「もう一つ。あえて言うが、ウチがこのネタを断念したのは、奴らおよびその”ツレ”のお歴々方からの凄いプレッシャーがあったからです。当然、自分たちの身の安全もある。だが、君と横田競子さんを危険な目に遭わせる訳には行かない。それがあったんです…」

不思議と、その言葉はすんなり信用できた

今から思えば、先日はこのアパートの前で言い合いにはなったが、この人からは妙に実直な感じが伝わったんだ


...



「…これは、業界で長く生きてきた人間のカンだが、この記事にはある狙いがある。そう睨んだんですよ。その延長線上には、君と今はおそらく君のかけがえのない人となったであろう、競子さんへの影響は小さくない。それで、その記事のこと伝えておこうと…」

「追川さん、あのう、今は何も言えないんですよ。まずいんです。お判りでしょうが。でも、明日、彼女と会うんです。この記事、見せます。いろいろ相談してみます。それで、こちらから連絡します…」

「香月さん…。じゃあ、こちらの電話番号ですが…」

オレは追川さんの連絡先を聞いてから電話を切った



...



アタマの中では様々な思いが駆け巡った

まず、この情報提供者はまず間違いなくタクヤだ

そのタクヤを導いたのは…、麻衣に他ならない

そしてその狙いは…

挑発…!

オレには今まで、麻衣の行動パターンが読めなかった

でも、ヤツと病院で丁々発止やりあって、ふと感じたんだ

アイツが時折口にする”真正面”という意味…

これは、ガチンとぶつかり合うことなのだろうが、自分を相手にだけでなく、自分に向けても相手以上に全力でぶつかってる…

麻衣の目的は、この社会的信頼性に乏しい週刊誌に掲載したことでのリターンだ

その相手が相和会なのは言うまでもないが、それだけか?

ケイコちゃんとオレ…

オレ達二人からのボールも待ってるんじゃないのか?

それなら、麻衣、病院での約束は反故かよ!

その晩、眠りについてから翌朝まで、オレのアタマは麻衣に占領されていたよ




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