筒井くんと眠る夜 〜年下ワンコ系男子は御曹司への嫉妬を隠さない〜
レールと運命
「あら、いらしたわよ」
母の言葉にハッとする。ドキドキしながら顔を上げると、そこには父や母と同年代の男女が立っていた。
急いで椅子から立ち上がる。
「はじめまして、小夜子さん。斑目和人(かずひと)です」
「斑目美紗(みさ)です」
「はじめまして、東条小夜子です」
民人さんのご両親。斑目グループを統括している方だから、もっと怖い感じかと思っていたけど威厳は感じるけど、温厚そうで気さくそうな雰囲気だ。
「息子ももうすぐ来ると思います。こんな大事な日にお待たせして、申し訳ない」
「いえいえ、ずっとお待たせしていたのはこちらですから」
母が私への嫌味も込めて言う。
民人さんに会ってしまったら、もうそこからはきっと止まることなく結婚、それから家庭に入って後継ぎを作って……っていう決まりきった人生が始まってしまう。
覚悟を決めたつもりだったけど、今さらになって息苦しくなって全身が震える。

『誰が一番小夜ちゃんを想ってて、小夜ちゃん自身は誰が好きなのか。親の敷いたレールから逃れたいんだったら、向き合わなきゃいけないこともあるんじゃないの?』

レールから逃れるなんて、私には

でも

『今どきのお姫様は自由でいいんだよ』 

私は、やっぱり

「あの…っ」
せめて民人さんが来る前に、と口を開く。
< 44 / 50 >

この作品をシェア

pagetop