真珠の首飾り、あるいは女王の薔薇
「きみは随分と有能で、陛下の信頼も厚い。私の薔薇(プリムローズ)と呼ばれるほどだと」


何より、文才が群を抜いていて、王配殿下の覚えもめでたい。


「選ぶ言葉がうつくしいと聞いて、気になってね」


きみの手紙を見聞きしたという者たちの話は、熱烈、情熱的という者もあれば、淑やかだとか、たおやかだとか言う者もあって、さまざまだったよ。


「そんな折、仕事を命じられた。仕事なら普通に話ができると思って、ここまで来たわけだ」


そうしたら。


「きみが、聞いていたより思慮深く有能で、努力家だと分かったんだ」


ジュディスと呼びかけた名に、一拍置いて文官と付随した。約束を守ってくれるらしい。


「きみの仕事ぶりや、文才を軽んじたわけではなかった。きみの能力や技術は素晴らしいと思う」

「えっ」

「……これを、きみは自分で磨いたんだろう」


穏やかなヘイゼルの視線が、粗末な紙の上を滑る。


「ましてや立場や性別に物言わせるつもりもなかった。でも今振り返れば、そう見える言葉選びと態度だったと思う」


私は。


「親しくなって、きみの選んだ言葉をもらってみたくなった。それだけだ」
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