それでも生きていてほしいから~統合失調症になった私の綴るアナタと十四人への手紙~

第二章 私のお父さんへ

貴男のことが頼りになりません。

貴男は私が大事な話をしようとしても、真面目な態度で聞いてくれません。 

いつも話半分でちゃんと聞いてくれているか分からないので、私はなかなか本音を話すことが出来ません。

貴男は私が幼い頃、怒るとよく物に当たっていました。

お母さんや私とお兄ちゃんに手を上げることは決してありませんでしたが、電気が付いたままのストーブを変形させるほど蹴ったこともありました。

お母さんに辛く当たることもありました。

悲しんでいるお母さんを慰めるのはいつも幼い私で、まだ保育園に通っている頃からお母さんの相談役をしていました。

お母さんはそんな私に「ゆうちゃんの方がお母さんみたい」と言っていました。

その時はそれが嫌だなんて思わなかったけど、大人になってから私はもっと子供らしくお母さんに甘えたかったと思うようになりました。

お母さんからお父さんに対する愚痴を聞いて、お父さんからもお母さんに対する愚痴を聞く。

そんな私は小学五年生のときに幼なじみのN.Oちゃんに八方美人だと言われました。

そして私の八方美人は今も続いています。

お母さんがなにかお父さんの気に入らないことをしたり、期待していたことをしないと、貴男は目に見えて機嫌が悪くなります。

お母さんが二階に上がったら、お父さんを宥めるのは私の役目です。

お父さんの言葉に傷ついたお母さんの話を聞くのも私の役目です。

私は家族の中で潤滑油のような役割を担わせてもらっているんだと思います。

昔から家の中で頻繁に大きな声で歌う私に、貴男は「賑やかでいいね」と言ってくれます。

例えお母さんの具合が悪くても、その分私が明るく振る舞って家の中が暗くならないようにしている私の気持ちを、なんとなく察してくれているのでしょうか。
 
私は物心付いたときからそんな優しい父に甘えるお父さんっ子でした。
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