淫夢でも溺愛されたい! 〜サキュバスは隣人にガチ恋する~
麻里奈が顔を引っ込めたのと、戸倉瑞樹が黄色くて小さな花を摘んで振り向いたのはほぼ同時だった。
戸倉瑞樹は麻里奈には決して見せないような優しい笑顔を浮かべてつんだばかりの花を見つめている。

は、花……?
麻里奈は戸倉瑞樹の姿になぜかドキドキしてしまった。

あんなに優しい笑顔を花に向けるなんて、想像もできない世界だったから。
麻里奈と戸倉瑞樹の生きている世界、見えている世界はあまりにも違うのではないかと、麻里奈はこの時始めて気がついた。

花をつんで上機嫌になった戸倉瑞樹はアパートへ戻るのではなく、そのまま駅の方角へと歩き出した。
時刻はまだ午前中だ。

これから彼女と待ち合わせをしていたり、迎えにいく可能性は十分にある。
もしかしたら、つんだ花をプレゼントするのかもしれない。

麻里奈ならそんな物をもらってもちっとも嬉しいと感じないけれど、野の花をプレゼントされて喜ぶような女性と付き合っているのかもしれない。
そう考えるとなんだかモヤモヤとした気持ちになってくる。

このモヤモヤを解消するためにも、戸倉瑞樹の彼女を一目見ないと気がすまない気持ちなっていた。
麻里奈は距離を保ちながらゆっくりと戸倉瑞樹の尾行を続けたのだった。
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