淫夢でも溺愛されたい! 〜サキュバスは隣人にガチ恋する~
元カノ
ほとんどなんの会話もないままマンションまで戻ってきていた。
ふたりでエレベーターに乗り、いつもの回数を押す。

「部屋に戻れそうですか?」
「え?」

「さっきから震えてる」
そう指摘されるまで麻里奈は自分が震えていることにも気が付かなかった。

ずっと握りしめられている左手が熱くて、汗をかいていないかそればかりが気になっていた。
「だ、大丈夫です」

慌ててそう返事をするけれど震えはなかなかおさまらない。
まさか、あの男にホテルに連れ込まれそうになったことが怖かったんだろうか?

それしか考えられなくて麻里奈の頭は混乱してくる。
だってあの男は自分から誘ったのだ。

誘ったときは確かに関係を持つ気でいたのに、どうして……。
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