淫夢でも溺愛されたい! 〜サキュバスは隣人にガチ恋する~
さすがに返す言葉が見つからなかった。
戸倉瑞樹の元カノが死んでいるなんて、想像したこともなかったから。

「あの繁華街から少し離れた場所で、事故があったんです。夜でも人通りが多くて明るい場所なのに、車が彼女に突っ込んだんです。結局相手は飲酒運転だったようで逮捕されました」

戸倉瑞樹の説明に、今日どうしてあの場所にいたのかが明白になった。
戸倉瑞樹は元カノが事故にあった場所に花を手向けに行っていたのだろう。

そう思う途端に胸の奥が苦しくなった。
なんだか泣いてしまいそうだ。

「……彼女のことが忘れられないんですね」
だから野良猫を保護することもできずにいる。

そんな彼の心中を考えたとき、麻里奈の中でストンッと腑に落ちるものがあった。
元々自分に勝ち目などなかったのだ。

死んだ人相手に争うなんて、そんなの無謀すぎる。
元カノの存在は戸倉瑞樹の中で年々大きく膨らんで、いい思い出ばかりが残っていたも不思議じゃない。
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