離婚記念日
食事が終わった後、いつものようにソファではコーヒーを飲みながらテレビを観た。ピッタリと彼にくっついた私は抱き寄せられるように肩を抱かれていた。
彼の手は何度となく私の髪を撫でる。その手の気持ちよさが私を眠りに誘う。

「莉美? 眠いの?」

「う……ん。でもまだ寝たくない」

瞼が閉じそうになりながらも首を横に張った。まだ、こうしていたい。

「ほうら、一緒に寝ようか」

耳元から聞こえる優しい声に、私は彼の体にぎゅっと腕を回した。すると肩に回されていた手が私を抱き寄せる。そして抱っこするように膝に乗せられ、自然と唇が重なった。
彼に抱き抱えられると寝室へ連れてこられた。

「莉美、好きだよ」

「太一くん……」

私も「好き」を返したかった。いつもなら返してる言葉が言えない。それは明日、私はこの家を出て行くから。
言葉の代わりに彼の逞しい体に手を回し、ぎゅっと抱きついた。すると彼も抱きしめ返してくれる。
そのままいつものように、求められるまま体を重ねた。
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