初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
「奥様が、急に倒れましたので。それで……」
 それでナナがラッシュを呼んでくれたのだろう。

「ありがとう、ナナ。心配をかけたわね」

 目にいっぱいの涙をこらえて、彼女は首を横に振った。

「あれを見たら、誰だってそうなります……。旦那様は、ひどいです」

 ケイトはぼんやりと天蓋を眺めた。幾何学模様で彩られた天蓋は、見ていると不思議な気分になる。

 ――見たくなかった。だけど、見てしまった。

 それを確かめるために、あの場に足を運んだのに、実際に目にしてしまうと心がえぐられるかのように痛んだ。
 あまりにも胸が苦しくなって、気を失ったのだ。情けない。

「やっぱり、あの噂は事実だったのね」

 その呟きに、ラッシュも顔をしかめた。

 マレリと腕を絡め楽しそうに話をしているイアンの姿を、はっきりと目にしてしまった。
 ラッシュだって間違いなく見ていただろうに。

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