赤金の回廊 ~御曹司に恋した庶民令嬢は愛に惑う~
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お見合い当日、深藍色の振袖を着た千枝華は硬い表情で相手を待っていた。
会場である紅楓山荘は貸し切りにされていた。
楓の植えられた名高い庭園があるホテルだ。夏には瑞々しい青葉がすがすがしく、秋には鮮やかに色を変えた紅葉となって人の目を楽しませる。宴会場、結婚式場が併設されていて、名家が結婚式を挙げることでも有名だった。
先に到着した千枝華たちが通されたのは二階のスイートルームだった。
窓には日差しに輝く紅葉が間近に迫り、見応えがある。この景色のためだけに二階にスイートを作ったのだと、千枝華は納得しながら見入った。
「あなたとの初デートで行った紅葉狩りを思い出すわ」
母がうっとりと眺めながら父に言う。
「そうだな」
父は照れ臭そうに答えた。
二人だけ幸せそうにして。
千枝華は不満を募らせた。
父は相手のことをまったく教えてくれなかった。写真すら見せてくれなかった。先入観がないほうがいいだろうという配慮だった。
「お待たせしました」
背後から年配の男性の声が降って来た。
立ち上がり、振り返った千枝華は驚いた。
そこには将周がいた。
彼は紺色のスーツを着ていた。学校の制服がブレザーだからさほど変わらないはずなのに、急に大人びて見えた。
彼のうしろには彼に似た顔の男性と優しそうな女性が立っていた。
「初めまして。五百里将周です。優木さん……千枝華さんには学校で仲良くしてもらっています」
将周は千枝華の両親に折り目正しくお辞儀をした。
「そうか、学校で。娘がお世話になっております」
その後、両親同士も紹介をしあったのち、将周の父が言った。
「あとは二人に任せて大丈夫そうですな。大人はあちらでゆっくり話しでもしましょうか」
残された千枝華は呆然と立ち尽くして将周を見た。
「座ろうか」