赤金の回廊 ~御曹司に恋した庶民令嬢は愛に惑う~
「千枝華!」
 叫んで将周が踏み込むと、ベッドの上にいた千枝華と大和が振り返った。
 二人はベッドの上に並べられたトランプをはさんで向かい合っていた。
 千枝華と将周の目が合い、硬直して見つめ合う。
 大和は裏を向けて並べられているトランプを冷静にひっくり返す。
 同じ数字が出たら揃えて手元に持って行き、またひっくり返す。
 続けて数度繰り返し、残っていた全部が彼の手元に集まった。
「よし、逆転勝利!」
 大和は満足げにつぶやき、将周を見た。
「思ったより早かったな。とはいっても神経衰弱だけでもう三戦目を終えたところだけど。さっきの爆音からしてヘリでご登場か。さすが御曹司」
 大和はにやりと笑った。
「七並べもやったしババ抜きもやったよ。でも二人だと面白みに欠けるんだよねー」
「これはどういことだ」
 将周は呆然とつぶやく。
 千枝華はベッドを下りて将周に歩み寄った。
「正直、私もよくわからない。種明かしはあなたが来てからだって……」
「あ、スマホ返すね」
 脱がれた上着のポケットをさぐり、スマホを取り出すと将周に投げる。
「私の! いつの間に!?」
 千枝華は驚いて声を上げた。
「君は不用心だから一人で海外旅行しないほうがいいよ」
 くすくすと大和は笑う。
 電源は切られていた。将周は千枝華にスマホを渡す。
「まあ座りなよ」
 大和はベッドを下りて冷蔵庫を開けた。
< 34 / 42 >

この作品をシェア

pagetop