俺に夢中になれよ~純情秘書は溺甘副社長の独占欲を拒めない
いつもと変わらない日々は過ぎ、金曜日。
もう定時か・・・
副社長はまだ会議から帰って来てないけど・・・

「先に帰っていいからね」
いつも金曜日は、どこか機嫌が悪い。
副社長も金曜日は何かあって、早く帰りたいのかな・・・
もしかして・・・週末デートとか・・・

胸が締め付けられる。
好きの気持ちが無くなれば楽なんだけど・・・
想いは、膨れ上がっていくばかりだし・・・

富山君との同期会も2か月続いたけど、段々と楽しさが無くなってきた。
他部署の仕事の話を知りたいと思ってたけど、最近、悪口ばかり耳にした。
副社長の優しさを話すると、否定される。
少し、距離を置こうかな・・・

もうそろそろ出ないと。
富山君に、いつもと違うお店に行こうと誘われたから、足早に部屋を出た。

あっ、確か今日、帰る頃には雨が振るって言ってた。
考え事してから、折りたたみ傘、忘れちゃった!
強く降りそうだし・・・
取りに戻ろう。

副社長室の前に着き、ドアを開けようとした時、フロア奥の役員会議室に電気がついていた。

確か消したはずなのに・・・
磨りガラスの会議室は、足元だけがクリアガラスで中が見える。
誰か居る。女性と・・・男性・・・
女性のすすり泣く声がした。

「疑うことなんて、してないよ」
「だって・・・」
「信じろよ」
「・・・うん、分かった」
この声・・・副社長と皐さんだ・・・

鼓動が『バクンッ』と跳ね上がるように打つ。
私は2人に気付かれないように、静かにその場を立ち去った。
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