俺に夢中になれよ~純情秘書は溺甘副社長の独占欲を拒めない
さっきの会話・・・
唯の幼馴染みじゃない・・・よね。
経験が無い私でも、分かる・・・

分かっていたはずなのに・・・
でも、何処かで仲が良いだけの幼馴染みだと、信じたかった。

素敵な彼女がきっといる。そんな事、分かってた。
でも、副社長が微笑んでくれると、忘れてしまう。
突きつけられた現実に涙が溢れる。

胸が苦しい。呼吸が出来ない。
こんなに大好きになった人、初めてなのに・・・

あぁ・・・やっぱり、私が好きになる人には、他に好きな人がいるんだ・・・

足が重い・・・同期会に行きたく無かった。
でも、予約してくれた富山君に申し訳無いし、同期会を止めたい事も話したいし・・・
お店の前に着いた私は、深呼吸して心を落ち着かせてから、店に入った。

「ごめんね、仕事終わらなくて、遅くなっちゃった」
「大丈夫だよ」

笑顔で迎えてくれた富山君は、いつもと同じように、1週間であったことを話していた。
自分の判断で仕事をしていたら、先輩に色々と指摘されて、叱られたらしい。

「ほんと、やる気無くすよね。あれっ、今日は元気ないね」
「そ、そうかな。ちょっと疲れたのかも」
同期会を止めるなら、せめて、今日は笑顔でいないと。

「本当は大変なんだろ?副社長の秘書って」
「ううん。いつも言ってるけど、凄く優しいよ」

すると、凄く怪訝そうな顔つきをして、話し出した。
「副社長の話をすると楽しそうだもんね。俺が知ってる副社長とは違って、イメージがつかないよ。前に会議に参加した時、やり手の部長すら詰め寄られて、必死だったよ」
「きっと、私に優しいのは、頼りないからだと思う」
「そうだといいけど・・・同期として、こんなに傍にいるのに嫉妬するよ」

今日は、富山君との会話に、返す言葉も浮かばない。
そうだ。これからの同期会の事も伝えないと・・・

「ねぇ、富山君、私ね」
「今日は少し早めに出よう。行きたいところがあるから」
「・・・あの、話が」
「場所、変えてからゆっくり聞くよ。出ようか」
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