俺に夢中になれよ~純情秘書は溺甘副社長の独占欲を拒めない
皐さんが先輩の教授に挨拶をして、部屋に通して貰った。
皆が話をしているのを、ただ、後ろで聞いている。
しばらくして柊弥さんは、ドイツから来た教授を紹介されていた。

びっくりしたのは、通訳の人を通さず、ドイツ語で話をする柊弥さんと皐さん。
2人とも英語だけじゃなく、ドイツ語も話せるんだ・・・

益々、2人の凄さと自分との差を突きつけられる。
明るい空間に、ポツリと取り残され、まるで異空間にいるようだ。

話が終わって、皆の後に続いて挨拶だけして、部屋を出た。
結局、私は佇んでいただけで、何も分からなかった。
来るんじゃ・・・なかったかな・・・

「柊弥君。明日の夜、うちの部長達と食事会するの。今日のこと詰めたいから来ない?」
「そうだなぁ、週末だしいいよ。早い方がいいからね」
「じゃあ、また連絡するね」
柊弥さんの背中をポンと叩いて、こっちを向いた。

「青野さん、お疲れ様でした!」
笑顔を向けられたけど、さっきの行動に、顔が引きつりそう・・・
「お疲れ様でした。失礼します」
胸が・・・モヤモヤしてる・・・

帰る車の中で、
「ごめんね、今日は説明も出来なくて。退屈だったろ」
優しい柊弥さんは、気遣ってくれた。

今日はそれが、出来ない私を慰めてるようで空しい。
皐さんの素敵さと、自分との差を思い知らされる。

「お二人とも凄いですね。ドイツ語も話されて」
「俺は大学の時にドイツ語も勉強したんだ。皐さんは、俺が話せるのを悔しがって、社会人になってから勉強したんだよ」

社会人になってから・・・
私は、英会話を勉強していても、流暢に話されるとまだ聞き取れない。

「その頃は、仕事帰りに会社に来て、付き合わされたり、休みにまで練習に付き合って、大変だったよ。でも、負けず嫌いだから、あんなに話せるようになったんだ」
「凄いですね、皐さんて」
「そうだな。でも、しっかりしてそうで、弱い所もあるから・・・」

皐さんのこと、よく理解しているんだ、柊弥さん。
その遠くを見る瞳・・・
弱い所・・・柊弥さんにだけ見せる皐さんの姿。
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