俺に夢中になれよ~純情秘書は溺甘副社長の独占欲を拒めない
2人の会話を耳にした時のことを思い出す。
『ダメね・・・こんなに好きなのに』
『そんな皐さんだからいいんだよ』
初めて、皐さんと出会った、あの日の2人の会話。

『信じろよ』
役員会議室で、涙声で話す皐さんを慰めていた柊弥さん。

『お二人は、付き合っていたんですか?』

その言葉が出かかった時、思わず言葉を飲み込んだ。
聞いて・・・『そうだよ』と言われたら・・・
きっと私はこれからも、皐さんと柊弥さんとの事で、いつもモヤモヤする。

私が気にするから言わないとしたら・・・
柊弥さんの気持ちが、正解のように思う。

2人の間には・・・きっと何かがあった。
でも、柊弥さんの同時に2人は愛せないって言葉を、私は信じるしかない。
今は、何も無いって信じるしか・・・

夕食を作ると、「今日も美味しいよ」と毎日褒めてくれる柊弥さんは、今日も変わらない。
いつもと変わりなく、優しい柊弥さん。
それなのに、心が晴れない。

シャワーを浴びて映る鏡の自分を、皐さんと比べる。
何もかも・・・敵わない。

寝る準備を終わらせてベッドに入ると、
「花純・・・」
優しいキスが続き、服に手が掛かる。

もしかして、皐さんとも・・・こんなことしてたのかな・・・
柊弥さんが、沢山の女性と関係を持った事は、仕方ない。
でも、皐さんは知ってる存在。

付き合っていたなら・・・私と同じようにベッドの上で・・・
考えないようにしようと思っても、いつの間にか、映像が頭に浮かぶ。

「花純・・・どうした?」
「いえ・・・何も・・・」
「いつもと違うぞ・・・どうしたんだ?」
「・・・凄く疲れていて・・・今日は・・・ごめんなさい」
「そうだな・・・慣れない事で疲れているのに、気が利かなくて悪かった」
私を抱きしめて、頭を撫でる。

嘘をついちゃった・・・
自分の余裕の無さに、幼さを改めて実感した。
結局その日は、眠れず、気が付けば、空が明るくなり始めた。
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