『遠慮しないで』と甘く囁かれて ~誠実な御曹司の懐妊溺愛~
 佳奈はコクンと頷いた。ホテルに泊まることの意味が、わからない年齢ではない。恥ずかしがる佳奈を見て、礼二も照れくさそうに頭をかいた。
「クリスマスが楽しみだね」
「あ、でもその前に子どもクリスマス会があるの」
「へぇ、僕も見に行こうかな」
「本当に?」
「いいなら行くよ。さ、残りのチーズケーキ、一口もらっていい?」
「はい、あっ、どうぞ」
 礼二にスプーンを手渡そうとすると、首を振って受け取らない代わりに口を開けた。
「あーん」
「ええっと、礼二さん?」
「佳奈に食べさせてほしいな」
 礼二は人懐っこい笑顔で佳奈にねだっている。まさか、大人の男の礼二にそんなことを言われるなんて。焦りながらも佳奈はスプーンでケーキをすくうと口元に運ぶ。
「ん、美味しい」
 からりと晴れたような礼二の笑顔に、胸がキュンとときめく。こんなにも男らしくて、素敵な人が自分の恋人だなんて、やっぱり信じられない。佳奈は浮き立つ心を抑えることができなかった。

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