『遠慮しないで』と甘く囁かれて ~誠実な御曹司の懐妊溺愛~
「先生、ヘリで運ぶのはどうですか。ドクターヘリを要請してくだされば、東京に知り合いの病院があります」
「ヘリですか、それも一つです。ですが、治療代に更に移動費もかかってしまいますが」
「それは問題ありません」
「礼二さん、それはっ」
「いいから。佳奈、遠慮しないで」
 かつてのように、礼二は佳奈に語りかける。動揺している佳奈に代わって礼二は医師と話をすると、祖母を東京に搬送する手続きを終えてしまった。
「佳奈、今は僕に任せて欲しい」
「礼二さん」
 胸の中にいる真奈を抱きしめながら、佳奈はただ礼二を見上げることしかできない。
 祖母は結局、ドクターヘリによって東京へ搬送された。病院の医師も、搬送先には有名な脳外科医がいて、最新式の医療機器もそろっていると言う。通常であれば、予約をするのも一か月待ちのはずが、礼二はどうにかして祖母の治療を取り付けてしまった。
「礼二さん、ありがとう。何から何まで」
「いや、おばあ様の治療はこれからだよ。東京の病院まで僕が送ろう」
「……はい」
 まだ小さな真奈を連れてひとりで東京に行くのも不安だ。大きな荷物を抱えて電車の乗り降りを考えると、車で移動できるのは助かる。
「今は緊急時なのだから、本当に遠慮しないで」
「……はい」
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