『遠慮しないで』と甘く囁かれて ~誠実な御曹司の懐妊溺愛~
 再会してからの礼二は、どんな佳奈でも受け入れてくれている。あんなにも、包容力のある人は他にはいない。祖母のことも、真奈のことも支えてくれる。そして佳奈の心の中には、くすぶり続けている想いがあった。
(私、まだ……、ううん、ずっと礼二さんのことが好きだった)
 真奈が可愛いのは、やはり愛しい礼二の娘だから。認めたくなかったけれど、礼二が愛しいという想いが消えたことはない。その代わりに、真奈を精一杯愛してきた。だから——本当は彼の求婚を受け入れるのが一番いいことはわかっている。あんなにも優しくて、真奈の父親で、佳奈を愛してくれている。
(もう、彼を許したいのに)
 佳奈は自分の心をさらけ出すように目を閉じたまま、心の中に響く声を聞くように自分と向き合った。そして目を開けると、ステンドグラスの光が真奈の頭上に届いていた。
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