秘密



 何度かでかけて、小説だとか、テレビ番組とか、授業のこととか話していると周りは探るように「付き合っているのか」と聞いた。それと忠告するように「アイツ下緩いから気を付けなよ」と言われた。話を聞いていると思ったよりも節操なしな男だったが、教えてくれた言葉にやっかみも入っていたのかもしれない。私は笑ってその話題からいつも遠ざけていた。
 見た目はかなり好青年で、愛想もいい。来るもの拒まず、去る者追わずにだってなれるだろう。私は付き合ってないよとだけ言うにとどめた。彼女らはつまんなさそうな顔をして去っていった。一人を除いて。

「で、本当に付き合ってないの?」

 剣持まどかはくるんとさせた睫毛をぱちぱちとさせながら、再度確認するように聞いてきた。手間暇かけないと保てないだろう美しいストレートヘアーに、見事なお化粧である。お人形みたいな華奢な骨格と小さな顔だ。両手で顔を包みながら尋問してもう二十分が経つ。学食で向かい合って食べているが、決して誘われたわけでもなく誘ったわけでもない。彼女が私を見つけるなり目の前の席を陣取った。私は親子丼を食べながら再三言った同じ言葉をもう一度だけ言う。
< 14 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop