秘密


 理世は変わった女だった。いきなり意識した、なんてナンパまがいのことを言った割に初心な女だった。今まで周りにいたことがないタイプで、物珍しさに遊んでくれるならと色々聞いたけれどそういった意図はまるでなかった。彼女自身困惑しており、弾みだったという。なんとなく彼女が気になって映画に誘った。映画は正直何でもよかった。

 劇場のスクリーンを険しい顔と苦悶の表情で見ているあまりの没入具合に驚いた。
 ありふれた話だが琴線に触れる場面でもあったのだろうか。
 その表情は映画が終わった後も続いた。

 理世は秘密を聖域だと思っていた。他人が勝手に触れるべきでない領域だと。そこを暴くことへの嫌悪感を露わにしていた。理世に興味を持ったのはそこからだ。話していて、居心地がよく自分の意見はしっかり言う女である。そして彼女は口が固く、友達に秘密にしていてほしいと言われたことを誰にも話さなかった。俺は本人からその軽い秘密を知らされており、その本人も秘密というわりには広まっていることに気にした様子もなかった。彼女だけが誰に聞かれても知らない、分からないと答えた。その徹底した姿に好感を持ったし、それと同時に吐き出したら楽なのにとも苛立った。
< 26 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop