秘密
 往生際が悪く、何度も理世に確認して抱いた。嬉しいのに、傷をつけたくて仕方なかった。理世が反応するたびに、自制をしながら時間をかけて身体を開く。理世の目は行為が終わった後、湿り気を帯びていた。赤く充血して、涙を一筋流した。その表情を見てとてつもなく嫌な予感に襲われた。ざらりと心の奥底が見透かされた視線にどくどくと脈だった。理世は自分の人差し指で涙を拭いて「私はいなくならないから」と言った。
 俺は何も話していないのに全て受け入れられたようなそんな安心感が包む。妙に泣きたくなったけど、誤魔化すようにして自分の胸板に理世の顔を押し付けた。離したくなくて、夜通し身体を重ねた。

 翌日以降からも理世の態度はまるで変わらなかった。何もなかったかのように会話し、接してくれる。安心したのも束の間、とてつもなく寂しさを感じた。
 ずるい男だな、俺は。そう思って自嘲するほかない。
 自分が拒絶し、期待を持たせるような発言をした上で拒否をし、最後私はいなくならないからと言ってもらえたことに安堵した。自分が友達だったらやめろ、というだろう。
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