秘密


 お父さんの目を合わせたら率直に「お父さん、たばこかいきん?」と聞いた。
 お父さんは目をまん丸にした後自分の袖口などを口元に持っていき、確かめるように嗅いだ。
 お父さんは焦ったように私に聞いた。

「お父さん、臭い…?」

 なにやら悲壮めいた声だ。
 私は首を横に振る。

「ううん、そんなことないよ」
「理世は優しいな」

 くしゃり、と困ったように笑って私の頭を優しく撫でた。
 私はなんだか褒められたような気がしてしまって早くお母さんにも教えたくなった。

 お父さんと手を繋いで帰って、扉を開けるとお母さんがエプロン姿でスリッパをパタパタとさせながら出迎えた。「お父さん、理世、お帰り」そう柔和に微笑むお母さんの後ろから、野菜を煮たコンソメのいい匂いがしてきた。

「ただいま!今日のご飯何?」
「ロールキャベツよ。手を洗ってきなさい」
「はーい」

 ロールキャベツ。それは理世の好きな料理だ。急いで、靴を脱いで洗面所まで走り抜けようとした。お父さんはまだ革靴をもたもたと脱いでいる。お母さんはまだそこにいた。 私はいけない、と思って立ち止まった。早くお母さんにも教えてあげないとと思い振り返った。
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