秘密


「どうしたの?」
「いや、今の予告に載ってたの大昔に映画館で見に行ったことがあって」

 思い出に浸るように目を細めた。

「……面白かった?」

 そう尋ねると、彼は苦く笑った。

「子どもには全く意味が分からなかった。いつも同じところで目覚めて同じ結末にしかならないのを打ち破るっていう話なんだけど、小学校低学年で、ホラーアクションなんて見せるものじゃない。当時、R15なんて表記あってもざらに連れていかれるから。映画館でずっと目を瞑ってた」
「それは…トラウマになるね」
「だろ?ずっとこの映画だけは、トラウマだ。最後に抜け出せるっていうのも、陳腐だし」

 冷たさを含んだ雑な言い方で吐き捨てた。
 それがさっきまで見てきた彼に合わないなって思っていたら照明が落ちて真っ暗になる。
 スクリーンだけ白く光る。そこから映画の注意事項が流れて、映画が始まった。

 物語のクライマックスに入るとき、犯人の秘密がどんどん暴かれていく。事件のピースはそれだというように犯人の抱えていた想いも、出来事も何もかも乱暴に剥がされていく。最初交番に殺害されている男を通報したのは主人公で、そしてのちに犯人として描かれていくさまはリアルだった。動機から計画して実行にうつす過程を見たとき、涙が流れた。妹が性被害の被害者で、知られたくなくてひっそり自殺する。それを隠匿して復讐心を抱く主人公。秘密の全てを暴こうと躍起になる警察。ありふれた内容だ。でも、妹の抱えていた秘密をずっと守ろうとしていた主人公の計画するまでの流れを見て、私はどうかこの秘密を主人公が暴かれることなく物語を終えてほしいと心の底から願っていた。
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