厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 たあいない話をしながら柔らかな金の髪に触れ、タオルで水分を吸い取っていくうちに、だんだんと気持ちも落ち着いてきた。

「今日は疲れただろう。あんな重いドレスを身に着けて、一日中動き回ったんだ」
「いえ、不思議と疲れはないんです。ただ嬉しくて、こんなにも幸せで、なんだか申し訳なくなるくらい……」

 満ち足りた気持ちに呼応するように、フランの体の中のマナもようやく復調の兆しを見せていた。
 クリムトによれば、回復が遅れたのはストレスによるものだったのではないかとのこと。メンタルが大きく作用するマナにおいて、フランの心の持ち様が大きく影響するらしい。
 能力を取り戻したことをライズは喜んでくれたが、そのことでフランは新たな憂いを抱えることになった。
 増えるのも減るのも不安定で、思ったより繊細なマナ。彼が特別だと言ってくれた力が、もしもなくなってしまったら――それでも彼は自分を必要としてくれるのだろうか。

「どうした?」

 彼が、わずかな変化を読み取って尋ねてくる。
< 262 / 265 >

この作品をシェア

pagetop