厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 夫婦で隠し事はしないと決めたので、正直に胸の内を打ち明けた。すると彼は、うーんと首を傾げてからとびっきりの笑顔を見せ、なんだそんなことかと口にする。

「たしかに、きっかけはあのような出会いだったが、おまえには初めから惹かれるものを感じていたよ。聖獣の姿になれても、なれなくても、結果は同じだったと思う。なんならひとつずつ、惚れているところを列挙してやろうか?」
「えっ、いえ、そんな……」

 それはちょっと恥ずかしい。そう断ったのに、いたずらな口元はにやりと微笑んで、甘い光を瞳に宿す。
 乾かすのはもういいと手を握られ、ライズがベッドに乗り上げて、向き合う形で体を引き寄せられた。ほのかに石鹸の香りがして、湯上りの彼の体温を間近に感じる。

「まず……愛らしい鼻、それから果物のような唇」

 言いながらスマートな仕草で、鼻先と口元に軽く唇を押し当ててきた。どうやら彼は、挙げた箇所にキスをしていくつもりのようだ。
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