縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
菜園から顔をのぞかせていた薫子は村の男性がそう言っているのを耳にして、すぐさま切神の元へと走った。
「切神さま、今村では病気が流行っているみたいです」

「あぁ。昨日も同じ願いをしに来た人がいたな」
菜園にいた切神はふと思い出したように顔を上げた。

「そこまで深刻な病なのか」
「わかりません。でも昨日も今日も同じ願いをする人が来たということは、深刻なのかもしれません。これじゃ菊乃を村にやることもできなくなります」

菊乃には神域で取れた作物を村に持っていくだけでなく、屋敷内の雑用も手伝ってもらっている。
だから仕事がなくなることはないけれど、村作物を届けられなければ村人が潤わない。

「そうだな。どんな病気が流行り始めているのか、明日にでも見てくることにしよう」
「よろしくお願いします」
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