縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
☆☆☆

薫子からの報告を受けた切神は翌朝の早い時間に屋敷を出た。
「切神さまは本当に薫子のことが大好きなのね」

昼の準備をしている最中に突然菊乃がそんなことをいい出したので、薫子はあやうく指を切ってしまうところだった。
「な、なにを言い出すの?」

「だって、薫子の言ったことならすぐに動くじゃない」
菊乃は食器棚からお膳を出しながら言う。

「そ、そんなことは……」
ないと否定しきれなかった。

確かに切神さまは自分の意見をないがしろにすることがない。
意見のすれ違いはあれど、鼻から否定されたことはないんじゃないだろうか。

「羨ましい。私もいつかそんな人が現れるかしら」
「菊乃ならきっと大丈夫よ。村一番の美人なんだから」
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