紅色に染まる頃
第二十二章 結納
下見の旅から帰ってくると、美紅と伊織は資料をまとめて企画会議を開いた。

「今回は福島、秋田、青森の3県の桜の名所を回りました」

プロジェクターに写真を映し出しながら、二人で役員達に説明する。

「どの場所も素晴らしく、まさに『ノスタルジックな日本の原風景』と言える景色が広がっていました」

次々と映し出される桜の写真に、皆からも感嘆の声が上がる。

「これはなんと美しい。写真で見てもこれ程なら、実際はもっと綺麗なのでしょうね」
「はい。その場にいるからこそ感じられる雰囲気や空気感、直接肌で感じた圧倒されるような自然の偉大さ。宿に戻ってもずっと余韻に浸り、日常生活を忘れて贅沢なひと時を過ごすことが出来ました」

伊織の言葉に、木崎社長も頷く。

「時の宿を作るに相応しい場所だな。まずは弘前を第一候補にして、リサーチを始めよう」
「はい」

早速、担当の部署に振り分けて、時の宿 第二弾の計画が進められることになった。
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