紅色に染まる頃
「こ、これは。まさか、この写真が……」

そう言った切り、わなわなとした様子で口を閉ざす。

「えーっと、美紅?ほら、いい写真じゃないか。良く撮れてるなー」
「伊織さん!どうしてあんなに大勢の人の前であんなことを?」

美紅のそのセリフは、結婚式が終わった後にも散々聞かされていた。

「ん?あんなことって?」

その時と同じようにとぼけてみる。

「ですから、その、こういう行為です!」

美紅がチラリとアルバムの写真に目を落とす。

「こういう行為って……。美紅、結婚式に誓いのキスなんて当たり前でしょ?みんな普通にやってるよ?」
「皆さんにとってはそうでも、私にとっては普通ではないです!」
「俺だって初めてだよ?結婚式でキスするなんて」
「では、どうして?予定では指輪の交換だけでしたよね?それなのに、家族や上司の皆さんの前で……」
「仕方ないじゃない。美紅があんなに可愛いこと言うから」
「理由になってないです!」

この不毛なやり取りも、既にあの日に繰り返していた。

「まあまあ、美紅。そんなに怒らなくても。ね?恥ずかしがり屋さんもここらで閉店ガラガラ」

伊織がシャッターを下ろす真似をすると、美紅は堪え切れずに吹き出した。

「あ、笑った。ほらね、美紅は笑顔の方が断然可愛いよ」

そして急にニヤリとする。

「美紅。クリスマスプレゼント、特にリクエストしなかったけど、やっぱり欲しいものあった」

そう言っていきなり美紅を抱き上げる。

「えっ、ちょっと、何?」
「美紅が欲しい」
「は?な、何を言って……」
「最高のクリスマスプレゼントだな」

伊織は美紅を抱いたまま寝室へと向かう。

「いやー、待って!プレゼントならツリーの下に……」
「それはまたあとで。こっちが先……。うぐっ、絞技かけるな、美紅!」

賑やかな二人の声はリビングから遠ざかり、最後にパタンと寝室のドアが閉まる音が響く。

誰もいなくなったリビングで、窓のそばのクリスマスツリーがキラキラと美しく輝いていた。
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