紅色に染まる頃
しっとりとしたナンバーを弾いたあと、エレナがにっこり笑って美紅に声をかける。

「美紅ちゃん、一緒に弾いて!」
「え、な、何を?」
「うーん……。とびきり明るい曲!」

腕を引かれてピアノの前に並んで座る。

「適当に合わせるから。どうぞ」

にこやかに促され、美紅は鍵盤に両手を載せた。

(とびきり明るい曲……。エレナさんが楽しくなるような)

美紅はひと呼吸置くと、アップテンポな曲を明るく弾き始めた。

『All I Want for Christmas Is You』

エレナが「Good choice!」と言って、即興で華やかな音を合わせてくれる。

英語で歌いながらノリノリで演奏するエレナに、美紅も思わず笑顔になる。

二人で顔を見合わせ、最後の音をゴージャスに飾ってから、息を合わせてジャン!と締めた。

伊織と紘が立ち上がって大きな拍手を送る。

「あー、楽しかった!」

エレナは心底嬉しそうに、美紅に明るい笑顔をみせた。

席に戻ったエレナの肩を、隣から紘が抱き寄せて頬にキスをする。

いつもなら赤面するが、美紅は一気に切なくなった。

幸せそうに見つめ合っている二人の写真を撮り、すぐに二人に送る。

「あら?ありがとう!美紅ちゃん」

着信に気づいたエレナが写真を見て、美紅に笑顔で礼を言う。

もう一度視線を落として写真を見つめるエレナの横顔は、微笑んでいるはずなのに泣きそうな表情にも見え、美紅はますます胸が締めつけられた。
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