紅色に染まる頃
真夜中の3時。

(もう行かなきゃ…)

エレナは自分を抱きしめてくれている温かく大きな紘の手から、ゆっくりと身体を起こした。

スッと身体が冷たい空気に触れ、心細さに泣きそうになる。

眠っている紘の横顔を見た途端、決意が揺らぎそうになり、グッと唇を噛みしめて視線を逸らした。

静かにベッドから降りて身支度を整える。
そしてお別れを言う為に紘のそばに跪いた。

(ずっと覚えておこう。優しくて強くて、いつも私を守ってくれた大好きなこの人を)

大丈夫。彼との大切な思い出があれば、私はこの先も一人で生きていける。

エレナはブレスレットに触れながら自分に言い聞かせると、最後にそっと紘の頬に口づけた。

「今までありがとう。大好きよ、紘」

小さくささやいてから迷いを振り切るように立ち上がり、うしろを振り返らずに部屋をあとにした。
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