捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
翌日。散々悩んだあげく、凛は昨夜買ってもらった服を着て出社した。
柔らかい素材の白いブラウスに膝が隠れる丈のフレアスカートを合わせ、その上に山吹色のカーディガンを羽織っている。
(どうしよう。急に服装を変えていったら、やっぱり変に思われるんじゃ……)
いつもはシンプルなスーツ姿なため、こうして色を取り入れたオフィスファッションで会社に行くのは初めてだった。
デスクに着くなり、恵梨香が話しかけてくる。
「ちょっと凛! どうしたの? 随分イメージが違うじゃない」
「……あの、変ですか?」
「まさか。すごくいいと思う。私がいくら『硬すぎる格好じゃなくて大丈夫』って言ってもずっとスーツだったのに。どういう心境の変化?」
「えっと……」
答えに詰まっていると、「朝礼を始めます」と孝充の声がしておしゃべりが中断された。
すぐにタブレットを持って立ち上がると、輪の中心にいる孝充が鋭い目でこちらを見ている。
少し色味が派手だっただろうかと心配になったが、朝礼後も他の先輩秘書から恵梨香同様に褒めてもらえたので、彼の睨むような視線は気にしないことにした。