捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
デスクでメールのチェックを終え、腕時計で時間を確認し、亮介を出迎えるためにエレベーターホールへ向かう。
(本当に着てきちゃったけど、よかったんだよね?)
亮介からのどんなリアクションがあるのか未知数で、エレベーターの階数表示が上がるごとに鼓動が速くなっていく。
ポン、と軽い音を立てたエレベーターから亮介が下りてきたのを確認し、なんとか秘書の仮面を貼り付けて頭を下げた。
「おはようございます」
「あぁ、おはよう」
顔を上げると、いつもならすぐに歩き出す亮介がその場に留まって凛を見下ろしている。
(なっ、なに……?)
困惑に固まる凛をよそに、亮介はふわりと嬉しそうに微笑んだ。きっとここに他の社員がいたら、堅物副社長の笑顔に度肝を抜かれただろう。
すぐに咳払いをしてポーカーフェイスに戻ったが、取り繕うような仕草が素の感情だったのだと思えて、彼の視線を直接受け止めた肌がくすぐったい。