それでもキミと、愛にならない恋をしたい

 付き合ってもいないのにヤキモチを妬くなんてお門違いだし、面倒くさいと思われたくない。

 なんとか笑顔で乗り切ろうと無理やり口角を上げると、先輩が長身を屈めて私の顔を覗き込んでくる。

「な、なんですか?」
「どんな顔してるのか、見てみたくて」
「え?」
「変な心配しなくても、友達とだよ。中三になったばっかりの頃、受験が本格化する前に遊び尽くそうって毎週末ここに来てたんだ。だから俺も二年ぶり。菜々、俺がここに誰と来てたか気になってたんだろ」

 図星をつかれ、ぶわっと体温が上がる。身体中の血液が顔に向かって上がっていくような錯覚に陥り、思わず両手で頬を押さえた。

「ははっ、真っ赤」
「か、からかわないでくださいっ」

 以前は寡黙でクールな人だと思っていたのに、こうしてよく話すようになってからは、意地悪な少年みたいな顔もするんだと知った。

 恥ずかしくてたまらないのに、それがいやじゃないから困ってしまう。

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