財閥御曹司の独占的な深愛は 〜彼氏に捨てられて貯金をとられて借金まで押し付けられた夜、婚約者に逃げられて未練がましい財閥御曹司と一晩を過ごしたら結婚を申し込まれました〜
 数日後、海里は愛知を訪れた。
 自動車メーカーで有名なこの都市の、ある工場の寮の前で待ち構える。
 駐車場に車を止め、寮に向かって歩く人物を見て、海里は車を降りた。
 千遥は目を大きく見開いて彼を見た。
「どうしてここに」
「金持ちなめないで」
 彼は調査会社を駆使して彼女の足跡を追った。
 彼女は自分の車で移動していたから、追跡は容易だった。
「あなたは誤解をしている」
「してないわ」
 暗い顔で千遥は答える。
「とりあえず、また借金取りが来ても、あなたの借金じゃないなら一銭も払ってはいけない。払った時点で借金を認めたことになる。弁護士を入れるんだ。一緒に行こう」
 海里は手を差し出す。
 千遥はキュッと唇を結び、答えなかった。
 海里は困ったように眉を下げ、手をおろした。
「……あの女は違うんだ」
「違うって、なに」
 千遥はキッと海里を睨みつけた。
「子供まで作っておいて無責任な! 本当に私って男を見る目がないわ!」
 叫んで、千遥は走り出す。
「とにかく話し合おう! 連絡を待ってる!」
 彼の言葉に耳を塞ぎ、千遥は部屋へ駆け込んだ。
 
 カフェを辞めた――逃げ出した千遥は、期間工として自動車工場で働き始めた。即日採用で寮もあったから。
 今まで工場では働いたことがなく、慣れない作業は大変だった。それでも逃げ込める場所があるだけありがたかった。
 身に覚えのない借金は、今度はどうにもできないと思った。1億と違って500万なら、年月はかかるがなんとかできるだろう。
 そう思っていたときに、海里は現れた。
 うれしかった。
 だが、喜んではいけないのだ、と自分に言い聞かせた。彼には想う人がいて、その子供がいる。
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