財閥御曹司の独占的な深愛は 〜彼氏に捨てられて貯金をとられて借金まで押し付けられた夜、婚約者に逃げられて未練がましい財閥御曹司と一晩を過ごしたら結婚を申し込まれました〜
「午後2時でもいいでしょうか」
 ランチ客がひいて、ティータイムにも少し早い。これなら少しは邪魔にならずにすむはずだ。
「伝えておくわ」
 海恋はそう言い、千遥は礼を言って電話を切った。
 心は複雑に揺れていた。波と風でゆさぶられるボートを思い出し、千遥はため息をついた。

 土曜日になり、店に着いた千遥は気まずい気持ちで店内に入った。
「店長! 急に辞めたから心配しましたよ」
「なんで辞めちゃったんですか」
 わいわいとバイトに囲まれる。
 歓迎されて、なんだかホッとした気持ちになった。
「社長に呼ばれたの。どちらにいらっしゃる?」
「兄は来てないわよ」
 海恋が現れて、千遥に言った。
「モデルの海恋じゃん」
「なんでここに」
 バイトがひそひそする。
「夜に来るんだって。それまで私とお出掛けしまショ」
 海恋は強引に彼女を連れ出す。
 夜まで買い物に付き合わされ、疲れ果てて六時過ぎに店に戻った。
「まだ来てないわね」
 店を見て、海恋は言う。
 彼女のスマホが鳴り、海恋は出た。
 はっとした顔で千遥を見る。
「兄が危ないわ。殺される!」
「え?」
「あの女、茉優を調べさせていたの。あの女は兄を殺すつもりなの。兄が死ねば財産は全部子供に行くから。早く、助けに行って!」
「助けにって、どこへ」
「マリーナの、ボートが止まってるほう!」
 言われて、千遥は走り出す。
 見送った海恋はにやりと笑った。
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