財閥御曹司の独占的な深愛は 〜彼氏に捨てられて貯金をとられて借金まで押し付けられた夜、婚約者に逃げられて未練がましい財閥御曹司と一晩を過ごしたら結婚を申し込まれました〜
 三人は席につき、赤ん坊はバイトの一人が預かった。親戚に子供がいて慣れているという。
 ほかのバイトたちは、修羅場だ、とわくわくして覗いている。海恋も一緒になって陰から覗いていた。
「店長、男運ないねー」
「前の男は新しい女にとられて」
「今度の男は前の女にとられて」
「どこかにいい男いないものかねー」
「あそこにいる男じゃダメかなあ。金はあるし仕事もできるのよ」
 海里をさして、海恋はバイトに話しかける。
「前の女によろめく男かあ」
「女を守れない男はねえ」
「ねー」
 と女の子たちは頷き合う。
 正念場よ、がんばって。
 海恋は拳をぎゅっと握りしめて海里を応援した。

 向かい合って座った三人の口火を切ったのは、海里だった。
「茉優、本当はどういうつもりでここに来たんだ」
 茉優はじっとテーブルを見つめる。
「海里さん、そんな言い方は」
「あなたは黙っていてくれ」
 突き放され、千遥は唇を噛んだ。そうだ、自分は他人だ。彼の事情に口を出す立場にない。
「私にはあなたしかいないってわかったの」
 切なそうに、茉優は言う。
 海里は嫌悪に目を細めた。
「ほかに男がいるのはわかっているぞ。だから君が去ったとき俺は追わなかった」
 千遥は顔をひきつらせて二人を見た。
 茉優はテーブルを見つめ、海里は険しい顔をしている。
「DNA検査もした。赤ん坊は俺の子じゃない。そもそも計算が合わないからな。それ以前に本当にお前が生んだのか」
 千遥は唖然とした。自分の子じゃない赤ちゃんを連れ回すなんてことがあるのだろうか。
 ちっと舌打ちの音が聞こえた。
 鼻に皺を寄せた茉優が、海里を睨んでいた。
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