財閥御曹司の独占的な深愛は 〜彼氏に捨てられて貯金をとられて借金まで押し付けられた夜、婚約者に逃げられて未練がましい財閥御曹司と一晩を過ごしたら結婚を申し込まれました〜
 海里がパチンと指を鳴らすと、海面が割れた。
 白い潜水艇が水しぶきをあげて現れた。
「はあ!?」
 思わず大声を上げた。
「その名も遥海(はるか)。まるであなたと私が結ばれることが運命だったかのようだ」
 返事もできずに唖然と見つめる。少し宇宙船に似ていると思った。
 係員がどこからともなく現れてタラップを設置した。
「どうぞ」
 海里に手をとられて一緒に乗る。
「滑るから気をつけて」
 おそるおそる、潜水艇の上に乗る。
 てっぺんは平たくなっていて、手すりもあったし、思ったよりは歩きやすかった。
 彼に連れられて中に入る。
 中は両サイドに窓があり、座席は窓を向いて設置されていた。
「相模湾は、駿河湾、富山湾とともに三大深湾と言われているんだ。この20人乗りの潜水艇は観光用として春から運用する。深海の旅へ、一足先にあなたを招待するよ」
「潜水艇だなんて……」
「進水式はちょっと話題になってたけど、知らなかった?」
「忙しくてそれどころじゃなかったの」
 おそらくはちょうど裕太と美織が浮気して彼女に仕事をおしつけていたころだ。
「そのおかげであなたを驚かせることができたな」
 彼は微笑した。
 彼はこの三カ月の間に、裕太と美織を探し出して片をつけた。
 警察に捕まった裕太は初犯で反省を見せたので執行猶予がついた。海里は彼を追い込んで遠洋漁業に出立させた。千遥から奪った貯金はそこから返済させる「約束」になっていた。
 美織は詐欺で捕まった。彼女はホストにはまり、千遥になりすまして借金をしていたのだ。
 金融会社にも追い込みをかけ、倒産させた。
 海里はそれらを千遥には言っていない。彼女に余計な負担をかけたくなかったから。彼女が知っているのは、法によって彼らが裁かれ、貯金の返済が約束された、それだけだ。
 潜水艇は順調に進み、目的のポイントで潜水を開始する。
 毎分45メートルという速度で潜水した。どんどん窓の外が暗くなっていく。
「最大500メートルまで潜水できるが、安全を考慮して200メートルまでにしておくつもりだ。200メートルなら深海の定義にもあてはまるしね」
< 41 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop