♂のボクは、♀︎に恋をしない

桜木琉斗と会いました

ある日の放課後。
部室には僕しか居らず、特にやることもなく窓から校庭を見ていた。
じーっと彼…琉斗を見つめる。
クラスが違うから、あまり接点がない。
体育も合同じゃないし…。
なんなら委員会くらいな気がする…。
部活だって当然違うし…。
ちなみに琉斗はサッカー部。
サラッと伸びた横髪を耳にかけ、窓から校庭を見る。
ボールを追いかけ走り回っている琉斗。
夕日を浴びて輝いて見える。
「…頑張れ」
ボソリと届きもしない言葉を呟く。
きっと僕のこの恋は、琉斗に彼女が出来るまで校庭から眺めているだけで、一生叶わないんだろうな。
「何してんの?」
っ!?
振り返ると、ドアのところに彩咲が立っていた。
「びっくりした…なんだよ彩咲」
「私の質問に答えてくれる?…何をしているの?」
なんて答えるのが正解か…。
「別に。ただ校庭見てただけだけど」
僕の回答に、彩咲は眉を寄せる。
「本当に?じゃあさっき頑張れって言ってたのは誰に?」
しつこく迫ってくる彩咲。
そこに。
「彩咲…?何、してるの…?」
「っ、依咲…!?」
しまったとばかりに顔を青くする彩咲に、依咲は眉を吊り上がらせた。
「彩咲…この前僕が言ったこと覚えてる?」
「……」
「2人で決めたよね?忘れたとは言わせないけど。それに、どうして耀浬を巻き込むの?」
「…ごめん、なさい…」
依咲は普段温厚で全く感情を表に出さないけれど、今の依咲は完全に怒のオーラが出ていた。
「耀浬、ごめん…彩咲には言っとくから」
そう言って彩咲の手を握り、出て行った双子。
結局、何だったんだ…?
不審に思いながらもまた校庭を眺める。
やっぱり、かっこいい。
好きだなぁ…なんて思う。
そしてサッカー部が円陣を組む。
サッカー部の練習終わりには全員で円陣を組んで終わりにするから…もう今日は終わりだ。
ふぅっとため息をついて立ち上がる。
今日は練習が終わるの、いつもより30分も早かったな…。
何かあったのかな。
そう考えながら部室を出て、すぐ左横の図書室に入った。
本を返して、小説コーナーへ。
キョロキョロと辺りを見回して、いい本がないか探し回る。
あっ、これ良さそう…。
そう思って手に取ろうとしたとき。
パシッ。
誰かと本を同時に取った!
「わっ、ご、ごめんなさい…!」
慌てて手を離して謝り、その人の顔を恐る恐る見上げる。
「っ、ぇ」
「あー悪ぃ」
さ…さ…桜木琉斗!
「ん、これ欲しかったんだろ?やる」
「い、いやそんな…!貴方が借りてください…!」
強引に押し付けると、彼は笑って言った。
「じゃあ、俺が先に借りるから次お前に貸すよ。名前は?…って、まさか先輩?」
「い、1年2組、天月耀浬です」
「良かった…あ、俺1年3組桜木琉斗。今日からよろしくな!耀浬!」
「う、うん、よろしく…!」
先に本を借りて出て行った琉斗。
それを見送って、見えなくなった瞬間ヘナヘナと座り込む。
接点が無くて、叶わないと思っていたのに…まじか。
急接近だ…。
しかも、本を借りる約束まで…。
僕はルンルン気分で適当な小説を借りて、図書室を出た。
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