♂のボクは、♀︎に恋をしない

狙い【side琉斗】

俺は図書室で本を借り、“天月耀浬”という奴に話しかけ、友達になった。
そして階段を登り、3階の多目的室に入る。
中に居た黒いフードを被った人物に問いかける。
「…あれでいいんだろ?」
「…ありがと」
中に居た奴が微笑む。
「何パーカーのフードなんか被ってんだよ。キャラじゃねーよ…秋」
俺の言葉に、フードの人物…栗原秋がフードを脱いだ。
「そんなこと言うなよ…しゃーねーからさ」
にやりと自虐的に笑う秋。
「なんでこんなことしたんだよ」
俺が問いかけると、秋は口を開く。
「これは、耀浬の為だから」
「俺がアイツをからかうのがか?」
「うん。……全部作戦だし」
くすくすと笑う秋に、内心冷や汗が零れる。
「はっ、悪ぃー奴」
「…ほっといて」
秋は教卓に肘をついて、俺を睨め回す。
「じゃあ俺もう行くわ。ってか今度は何したらいいんだ?」
「またLINEするから。無闇に話すなよ琉斗」
「はいはい。じゃあな」
「またね〜」
ひらひらと手を振ってくる秋に手を上げて、俺は多目的室を出た。
…アイツ…どこまで計算なんだ…。
秋は、俺を使って耀浬を幸せにしたい訳ではないらしい。
どうやら、俺が耀浬に好意も何も持っていないことを承知の上で、俺を利用している。
俺目線…少女漫画みたいなシーンを再現して、俺は実は無自覚でやっていて、耀浬側は俺のことが好きだけど、俺は好きじゃなくて、フラれたところに秋が付け入る…みたいな流れを想像しているんだと思う。
よく分からないけど…。
アイツ…秋は、何を考えているかわからないから結構恐怖。
あーあ、あんな奴に好かれてる耀浬も可哀想だな。
ふぅっとため息をついて、帰路についた。
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